今昔物語 こんじゃくものがたり
成立:1120年頃
作者:不明(諸説あり)
巻数:全31巻
「今は昔」の書き出しで始まる物語がまとめられた『今昔物語』。
平安時代に成立したとみられており、百鬼夜行の世界が広がっています。
仏教の説話や、世俗説話が収録されており、釈迦如来の誕生についての話もあります。
今回は、そんななかから映画にもなった陰陽師の物語と、芥川龍之介に大きな影響を与えた羅生門の物語を紹介します。
陰陽道の天才。安部晴明の登場!!
安部晴明は、賀茂忠行(かものただゆき)に陰陽道を習っていました。
ある夜。
安部晴明は忠行の外出についていきました。
車中では忠行が寝ています。
ふと辺りを見回すと、いいようもないほど恐ろしい鬼どもが歩いている姿が見えました。
あわてた晴明は忠行を起こします。
忠行は法術を使って皆の姿を隠し、無事やり過ごすことができました。
このとき、晴明は自分の力で鬼の姿を認識できていました。
忠行は晴明がただ者ではないことを知り、陰陽道の奥義を伝えました。
忠行の死後。
10歳ほどの子ども2人を連れた老僧が晴明の家にやってきます。
老僧は陰陽道を習いたいというが、どうやら老僧は凄腕の持ち主。
お供の子どもも、式神のようです。
これを見ぬいた晴明は、もし式神なら召し隠せと念じて、呪文を唱えました。
そして、「今日は忙しいので、吉日を選んで来てください」と老僧を返しました。
老僧はすぐに戻ってきて、「私の供を返してください」と言って、晴明を試そうとしたことを詫びました。
晴明が呪文を唱えると、お供の子どもがもどってきました。
羅生門
ある男が盗みをはたらくために、京にやってきました。
そして、人に見つからぬよう羅生門の2階に上がりました。
羅生門の2階にいたのは、白髪の老婆。
若い女の死体から、髪を引き抜いていました。
「これは鬼ではないか!?」
恐れた盗人ですが、刀を抜いて走り寄ると老婆は慌てふためきました。
「何をしている」
と尋ねた盗人。
老婆は「私の主人だった人が死んだが、葬る人もないのでここに置き、髪を抜き取ってカツラにしようとしたのだ」と答えます。
これを聞いた盗人は、老婆の着物をはぎ取り、死人の着物と抜き取った髪も奪い取って逃げました。