洗練された日本の美意識を描いた『枕草子』とは

<出典:wikipedia

枕草子

作者:清少納言
成立:1000年頃
内容
ある題に対して機知にとんだ答えをする、「ものはづけ」と呼ばれる形のもの。(○○のものは××)
宮中の華やかな生活が描かれた日記風のもの。
日々感じたことを筆に任せて書いていく随筆風のもの。
これら3種類のものが混在しているのが『枕草子』です。

洗練された美意識。冒頭から感性が研ぎ澄まされる!!

春はあけぼの。
やうやうしろくなり行く山ぎは、すこしあかりて、むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる
(冒頭)

【意味】
春は明け方が良い。だんだん空が白んできて、山際が少し明るくなり、紫を帯びた雲が細くたなびいているのは趣がある

学校の教科書にも載っている有名な一節。

『枕草子』の冒頭部分です。

「夏は夜」「秋は夕暮れ」「冬はつとめて」と続き、季節の美しさを感じられる文章になっています。

 

自然の美しさを描いただけでなく、清少納言の想いが伝わってくるのも『枕草子』の魅力です。

~にげなきもの~
下衆(げす)の家に雪の降りたる。
また、月のさし入りたるも くちをし
(42段)

【意味】
~似つかわしくないもの~
身分の低いものの家に純白な雪が積もったり、月の光が差し込むのが残念である

定子の教育書??理想の有り方を示した生活哲学の書!!

『枕草子』の書かれたのは、清少納言が仕えていた定子が亡くなってからだと言われています。

しかし、「定子に読ませるお妃教育の書だった」という説もあります。

なぜなら、「ふさわしい有りよう」ついて書かれているから。

美を発見する感性を磨き、生活哲学を示す本となっているのです。

若くよろしき男の、下衆女の名よび馴れていひたるこそ にくけれ。
知りながらも、なにとかや、片文字はおぼえでいふは をかし
(54段)

【意味】
若くて身分や教養のある男が、身分の低い女の名前を気安く呼んでいるのは憎らしい。
知っていたとしても、うろ覚えのように言うのが良い。

才女、清少納言のエピソード

作者の清少納言は、曽祖父、父ともに歌人という文人の家に生まれました。

そして、女性のたしなみであった和歌だけでなく、男性が学んだ漢学も修めます。

清少納言の才女ぶりは、『枕草子』の一節から伝わってきます。

雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、炭櫃(すびつ)に火おこして、物語などして集りさぶらふに、
「少納言よ、香爐峯(こうろほう)の雪いかならん」と仰せらるれば、御格子あげさせて、御簾(みす)を高くあげたれば、わらはせ給ふ。
(299段)

【意味】
雪がとても高く降り積もっているのに、いつもと違って格子を下ろし申して、炭櫃に火をおこして、話などをして集まり控えていると
「少納言よ、香爐峯の雪はどうであろうか」と仰せられたので、格子をあげさせて、御簾を高く上げたところ、お笑いになる。

この一節は、中国の詩人、白楽天の詩「香爐峯の雪は簾を撥(かかげ)て看る」を知っていた清少納言が、定子の言葉に行動で答えた話です。

これを見た近くの女房たちは、「詩を知ってはいたが、思いつかなかった」といって清少納言を褒めています。

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