はじめに
後深草院二条は、日記『とはずがたり』の作者。
名前から分かるように、彼女は後深草院に愛された女性なのですが……この人の恋愛というのが、なかなかすごい!
『とはずがたり』には、彼女の恋愛がいくつか記されています。
後深草院との関係
二条の母親は、もともと後深草院の乳母でした。
しかし、二条を産んで2年ほどで亡くなってしまいました。
15歳の年上の後深草院は、乳母の縁から二条をとても可愛がってくれました。
二条の母が生前、二条に宮仕えをさせたがっていたため、二条は4歳のときには宮中で過ごすことのほうが多くなりました。
15歳の年齢差で親子のような雰囲気のあった後深草院と二条。
しかし、二条が14歳の年に状況が大きく変わりました。
まさかの妊娠!“雪の曙”
二条が14歳の当時。
恋文を送りあっていた男性がいました。
男性の名は“雪の曙”。現在、西園寺実兼のことだとされています。
二条は後深草院との間に皇子を産んだ翌年、実兼の子どもを身ごもってしまいました。
困った二条は嘘をつきます。
「院の子どもを身ごもりました」と。
そして、予定日が近づくと、また「悪い病気になってしまいました」と嘘をついて里下がりし、こっそり産んだ子どもは実兼に任せます。
院には、「流産してしまいました」と報告をして……。
呪いの“有明の月”
“雪の曙”と同じく、はっきり名前を記さず、“有明の月”と紹介される男性がいます。
彼の正体はなんと後深草院の異母弟である性助法親王。
ある秋の日。
二条はご祈祷所へと出かけたところ、性助法親王に激しい恋心を告白されます。
実は春頃から、性助法親王は二条に恋文を送っていました。
一途なその想いに心動かされるところはありましたが、そのうち二条は、性助法親王のあまりにも深すぎる想いが怖くなっていきます。
離れたがっている二条の気持ちに気づいた性助法親王は、絶縁状を送ってきます。
そこには神仏の名前があり、二条を恨んでいるという呪いの言葉が綴られていました。
御所を追い出されて・・・
宮廷内には二条の存在をよく思っていない人物がいました。
そのうちの一人、後深草院の中宮・東二条院が、二条の祖父に手紙を出しました。
「二条の存在が自分の立場を傷つけている。どうにかしてほしい」と求める内容でした。
これにより、二条は祖父から「宮廷を出るように」と言われてしまいました。
二条は出家し、あちこちを旅して、京に戻ると執筆をはじめ、『とはずがたり』が完成しました。
二条の奔放な振る舞いは人を振り回したはずですが、それでも愛さずにはいられない魅力があったことが伺えますね。