<出典:ほんのひきだし>
はじめに
北海道を中心とした日本の先住民族、「アイヌ」の人たち。
現在でもその末裔の方々が、伝統文化を継承しています。
古くから日本本土の和人との交流が盛んだったアイヌ民族は、様々な点で日本の影響を受けていました。
中でも料理はその独自性と、随所に見られる日本文化の影響もあいまって、近年関心が高まっています。
ここでは、そんなアイヌ料理の一端をのぞいてみましょう。
※ アイヌ語の表記法にはいくつかの種類がありますが、ここでは音をそのままカタカナで表しています
基本は「汁物」と「粥」
アイヌ民族の人たちにとって、厳寒の冬季を乗り切るために、食事を確保することがとても大切でした。
そこで、魚の燻製や干物、干し山菜や根茎からとれるでん粉など様々な保存食を作り、上手に、しかも豊かに生活をしていました。
山菜などの生鮮食品は乾燥品を用意。
アワやヒエなどの穀物も簡単な畑で栽培したといわれており、和人との交易によって米なども手に入ったようです。
アイヌの人たちの普段の食事はというと、基本的には「オハウ」とよばれる汁物のあと、「サヨ」という穀物粥で締めるというスタイルでした。
オハウにはさまざまな食材が用いられ、汎用性の高い料理として重宝されたといいます。
粥を意味する「サヨ」は日本語の「白湯(さゆ)」が元になっているともいわれ、汁物でお腹を満たした後の口直しのようにして味わわれたそうです。
味付けは基本的には、各自で塩を後から加える方法が多かったともいわれ、塩が貴重品であったことが伺われます。
以下、代表的な3つのアイヌ料理をご紹介します。
チタタプ
アイヌ料理の中でも有名なものに「チタタプ」があります。
これは肉や魚をミンチ状になるまで刃物で叩いていただくというもので、基本的には生で食べるものでした。
香りと風味のつよい「ギョウジャニンニク」などの山菜を薬味として混ぜ込んだり、味付けにも工夫がされていました。
新鮮な食材で作るのが前提ですが、古くなったチタタプはつみれのように丸めて汁物の具にすることもありました。
ルイベ
凍らせた魚を生で食べる、いわば刺身の一種です。
ロシアにも同様に凍らせた魚を薄く削って食べるという方法があり、寒冷な地域ならではの魚の食べ方です。
凍らせることによって寄生虫の心配が無くなり、生で食べても食中毒を起こさなくなります。
アイヌの人たちは、大まかに切り分けたルイベを少し火であぶって、とけかけたところに塩を振って賞味したそうです。
シト
キビやアワ、コメなどの粉を丸めた、お団子のことです。
日本の古語でお団子を指す「シトキ」が元になっているとされ、お祭りなどの特別な日の大事なお供え物として使われました。