明治時代の不思議な「全世界英雄番付」。ランクインした日本の英雄とは?

明治から大正にかけて活躍した冒険小説家・押川春浪(おしかわしゅんろう/1876年~1914年)という人物がいました。
『冒険世界』という雑誌を主宰し、一大冒険小説ブームを作りだした人です。
彼は、1909年(明治42年)正月号の雑誌付録として「全世界英雄番付」を作りました。
これがなかなか、当時の人々の歴史観を知ることができる興味深いものとなっています。

「全世界英雄番付」はどうやって作られたか

「全世界英雄番付」は、春浪が雑誌の読者に呼びかけた投票形式の人気歴史人物のランキング表です。
相撲の番付のような体裁になっています。
今となっては投票の方法などの詳細については不明ですが、「東洋之方」と「西洋之方」に分かれそれぞれ横綱から前頭64枚目まで計68名の歴史上の人物がずらりと並んでいます。

番付「西洋之方」

本題の日本の歴史人物のランクイン結果を見る前に、参考までに西洋のほうを見てみます。
横綱(1位)はナポレオン1世、大関(2位)はアレキサンダー大王、小結(3位)はカエサル。
この辺りは現代の私たちにもなんとなく理解できる選ばれ具合ですね。
選ばれている68人の中にはワシントン、ビスマルク、リンカーン、ルイ14世、ダビデ王、ルター、モーゼ、ブルータスまで登場しています。
なかなかの混沌ぶりで、時代も国も縦横無尽ですが、全時代、全世界を範囲にしているのですから、当然かもしれません。
投票が選択式だったのか、自由な記名方式だったのか気になるところです。

番付「東洋之方」に見る人気の人物トップ10

日本の武将は当然ながら「東洋之方」にランク付けされています。
東洋にはアジアの近隣諸国も含まれます。
とはいえ、日本人が投票した結果ですから、ほとんどが日本史上の有名人物となっています。
注目の横綱(1位)は、豊臣秀吉。
大関(2位)はモンゴルのジンギス・カン、
関脇(3位)は徳川家康、
小結(4位)は西郷隆盛となっています。

以下、5位から10位をご紹介します。
5位 北条時宗
6位 始皇帝
7位 諸葛孔明
8位 源頼朝
9位 伊達政宗
10位 織田信長

どうでしょうか。
意外な結果ですか?
織田信長よりも、北条時宗の人気が高かったのですね。
それにしても1位になった戦前の豊臣秀吉の人気はさすがです。
江戸幕府を開いた徳川家康以前の天下人といえば秀吉ですから、江戸幕府を廃して明治政府となった以降に人気があるのも納得です。
また、意外にも江戸幕府を作った徳川家康は、倒幕されてまだ時代の浅い明治でも人気が高かったようです。
諸葛孔明の人気は日本人の三国志好きのせいでしょうか。

東洋之方11位~68位を見て

源義経、毛利元就、上杉謙信、武田信玄、加藤清正、楠木正成、真田幸村、石田三成、山中鹿之助、後藤又兵衛、足利尊氏、新田義貞などいわゆる現代における人気武将もランクインしています。
興味深いものでは坂上田村麻呂、藤原鎌足、平清盛のランクイン。
そして小結の西郷隆盛に続けとばかりに吉田松陰や坂本龍馬、高杉晋作などまだ時代の浅い幕末に活躍した人物も登場しています。
大石内蔵助がランクインしているのは「忠臣蔵」の芝居の影響でしょうか。
裏切り者の代名詞のように現代で言われる織田信長を討った明智光秀も59位にランクインしていますよ。

現在このような投票を実施したら、どうなるでしょうか。
戦国時代系や幕末系のゲームの影響などが反映されて面白いかもしれませんね。

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