<出典:すいえん・けいかの 雑記想>
私たちがひらがなの表といえば「あいうえお」の五十音表でしょう。
それ以前は、いろは歌が使われていました。
今でも項目ごとに番号を振るように「イロハ」を使ったりします。
今回は、いろは歌についてのお話です。
いろは歌とは
いろは歌が文献上で最初に見出されるのは、1079年成立の『金光明最勝王経音義』(こんこうみょうさいしょうおうぎょうおんぎ)です。
これは『金光明最勝王経』と呼ばれる仏教経典の文字の音や字の意味の解説書で、そこに使われる仮名の一覧表として紹介されているものです。
いろは歌は仮名の手習いのために使われるようになったのは、11世紀ごろからと考えられています。
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす
全ての仮名を重複させずに使い、七五調の歌になっています。
これに漢字と濁点を入れて書くとこうなります。
色はにほへど 散りぬるを
我が世たれぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず
解釈は文字の清濁音の理解の仕方によって変わりますが、仏教的無常観を詠ったものだと言われています。
匂いたつような色の花も散ってしまう。
この世で誰が不変でいられるものか。
この世を超越して、
はかない夢をみたり、
酔いにふけったりするものではない。
作者はいったい・・・?
作者については諸説あります。
・いろは歌が真言宗系の学僧に使われることが多いこと
・文字を使う上での制約がありながら、仏教観をこれほど上手く表現していること
この2つから空海だろうという説があります。
ただ、空海の生きた時代が「いろは歌」成立より以前であり、その可能性は低いとも言われています。
ほかにも歌人である柿本人麻呂説、この歌のシークレットメッセージから太宰府に左遷された源高明、菅原道真ではないかといった説もあります。
呪いのシークレットメッセージ
七五調の歌と言われる「いろは歌」ですが、古い文献の中には7文字ずつに区切って書かれているものもあります。
歌を7文字ずつに区切って、各7文字目を縦に読んでみましょう。
するとそこから隠された言葉が浮かび上がってきます。
いろはにほへと
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす
最後の一文字を足せば、「とかなくてしす」つまり「咎(とが)無くて死す」となります。
いろは歌は、無実の罪で死んでいく遺恨が込められた歌とも言われているのです。
そのような理由で、政治的謀略によって失脚させられた源高明や菅原道真の名前が作者と挙げられるのでしょう。
ただの無邪気な仮名文字のお手本のように見える「いろは歌」ですが、1000年の時を越えた秘密のメッセージがあると思うと、恐ろしくもあり、魅力的ですね。