下関戦争を徹底解説!発端から講和締結まで、波乱の連続だった!

1864年3月

イギリス・ロンドンの地元紙をめくった伊藤俊輔(いとう しゅんすけ)は、英字の文面を追いながら絶句しました。

「連合国は砲撃をしかけてきた長州藩に対し、重大な決意をすることに決めた」

伊藤俊輔は、すぐさまロンドン大学の志道聞多へ報告しに行ったことでしょう。

 

イギリスに留学している伊藤俊輔(伊藤博文)と志道聞多(井上馨)は、英国をはじめ西洋列強がどれほど最新鋭の軍事力を備えているのかよく理解していました。

このままでは、長州藩は存続の危機に陥りかねません。

急遽、留学を取りやめて帰国をした二人ですが、日本では想像以上の困難が待ち受けていました。

発端は長州藩の単独攘夷決行

尊王攘夷派の急先鋒であった長州藩は、1863年5月10日に攘夷を決行するという幕府との取り交わしにもとづき、朝命を果たすべく攘夷を決行します。(幕府は攘夷を軍事行動とはみなしていなかった)

長州藩は関門海峡を通過するアメリカ商船・ベンブローグ号を砲撃。

予期せぬ下関側からの砲撃に、ベンブローグ号は関門海峡を退避しました。

さらに23日には、フランス通報艦・キャンシャン号にも、外国船とみるや砲撃を浴びせます。

キャンシャン号から書記官が派遣されましたが、長州藩士たちは抵抗する意思がない使者を負傷させてしまいました。

この関門海峡での情報は各国でも共有され、オランダも知るところでした。

とはいうものの、鎖国時から親交があるオランダは、まさか自分たちが砲撃されるとは思ってもみません。

オランダ東洋艦隊所属・メデューサ号が関門海峡を通過すると、オランダ側の予想に反して、長州藩から激しい攻撃を加えられてしまいます。

これは威嚇を目的とした砲撃ではありませんでした。

メデューサ号の乗員4人が死亡したばかりか、艦隊も大きな損傷を受けました。

 

1864年8月――イギリス・アメリカ・フランス・オランダの連合艦隊が報復のため、いっせいに砲撃をしてきました。

尊王攘夷の矢面にありながら、禁門の変によって京都から追放され、朝廷の後ろ盾も失ってしまった長州藩は、満足な武器を用意することもできないまま、連合艦隊に完敗しました。

帰国した伊藤博文が直面する困難

1864年6月10日。

長州藩の危機を救うため、イギリスから緊急帰国した伊藤俊輔と志道聞多は、2か月の航海で横浜に到着します。

英国領事館滞在外交官・ガウワーと謁見し、連合艦隊が報復として下関を砲撃するための準備が進められていることを教えられ、イギリスの地元紙に掲載されていた情報が誤りではなかったことが判明します。

伊藤俊輔と志道聞多は、さらに英国公使オールコックとも謁見します。

仏・蘭・米の承諾を得ることに成功したオールコックは、停戦講和を呼びかける書簡を作成しました。

帰藩したふたりは藩上層部の説得にあたりますが、徹底抗戦の方針は変わらず、さらには攘夷論者から命まで狙われてしまったのです。

それでも、どうにか藩主から英国軍艦での停戦交渉を任された志道聞多は、伊藤俊輔とともに交渉にあたりますが成立にはいたりませんでした。

さらに8月5日。

再度の交渉を任じられた志道聞多がイギリス艦隊に交渉を呼びかけようとしますが、その間に約束の刻限が過ぎてしまったため、連合艦隊は下関に砲撃を開始しました。

代表・高杉晋作による講和締結

長州藩が講和締結に白羽の矢を立てたのが、入牢中だった高杉晋作でした。

通訳を任じられたのは伊藤俊輔ですが、この講和締結も自身の奔走によって実現したものでした。

連合艦隊による襲撃から間もなく、連合艦隊の旗艦・ユーリアラス号へとひとりで乗り込み、交渉締結の直談判をしたのです。

講和締結の交渉が取り決められたとはいえ、長州藩の危機的な状況は変わりません。

長州藩は賠償金を突き付けられますが、高杉晋作は「そもそも、江戸幕府によって命じられていた攘夷ですから、長州藩が賠償金を支払う義務はありません」と応じませんでした。

そのため、結果的には300ドルという多額の賠償金は、江戸幕府が払うものだということで落としどころがつきました。

さらに、懸念していた彦島の咀嚼に交渉が及ぶと、高杉晋作が古事記の朗読をはじめます。

これを通訳しなければならないのですから、伊藤博文も頭を悩ませました。

しかし、これは彦島が日本古来よりの土地であると説明するとともに、そもそも交渉をうやむやにしてしまおうという、高杉晋作の作戦だったのです。

実際に、彦島の咀嚼は回避されました。

関門海峡を見渡しながら、もしこのとき高杉晋作の交渉が失敗をして、彦島が咀嚼されてしまっていたら、日本は植民地になっていたかもしれない…と、初代内閣総理大臣となった伊藤博文は振り返っています。

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