現代にも受け継がれる 3つの江戸ファーストフード

はじめに

世界でも類を見ない100万都市とし繁栄した江戸の街では、住民たちの胃袋を満たすための外食産業が大きな発達を遂げていました。

店舗型の形態はもとより、移動式の屋台で飲食物を扱うタイプの商店もあまたあり、さながら「ファーストフード」の様相を呈していたのです。

 

江戸時代にファーストフード的な食べ物として浸透した料理の中には、徐々に独自の発達を遂げて、現代では格式ある高級料理として定着したものも多くあります。

それらには日本の食文化を代表するものとして、海外にも広くその名が知れ渡るものもありますが、江戸時代の人々はいったいどのような楽しみ方をしていたのでしょうか。

私たちにもなじみ深い、3つの料理について考えてみましょう。

寿司

江戸のファーストフードの筆頭格「寿司」。

現代でも安価でおいしい回転寿司がありますが、専門の寿司店などが軒を連ね、押しも押されもせぬ高級料理に数えられる料理のひとつとなっています。

本来、寿司といえば米と魚介などを乳酸発酵させた「なれ寿司」という保存食のことでした。

それが酢を混ぜた飯に魚介などの切り身をのせた「握り寿司」の登場によって、屋台で一貫ずつ買ってつまめるファーストフードとして大人気となったのです。

江戸時代の握り寿司はシャリが大ぶりで、一貫に相応のボリュームがあったこと、保存や鮮度の問題などからネタは「酢〆」や「煮物」、そして「ヅケ」などの加工が施されたものが発達した点にあります。

このような伝統的な調理法は「江戸前の仕事」と呼ばれ、古来からの風情を残すものとして現代でも珍重されています。

そば

江戸時代のファーストフードとして忘れてはならないものに「そば」があります。

現代でも関東地方には蕎麦店が多いともいわれ、通人の粋な食べ方などが取りざたされることがあります。

こだわりの店では高級料理といって差し支えないジャンルではありますが、江戸時代には手軽に空腹を満たすことのできる便利な食事でもありました。

そばが現在見られるような麺状の形になったのが江戸時代の初め頃だとされており、それまではそば粉をお湯で練りあげた「そばがき」が一般的でした。

つなぎに小麦粉をなどを用いて麺にしたものを「そばきり」と呼び、江戸の人々に愛されました。

当時は醤油が貴重品だったため、そばつゆは味噌ベースの味わいで、現代とは随分雰囲気の異なるものだったようです。

天ぷら

南蛮料理がもとになったともいわれる「天ぷら」も、日本らしい料理のひとつです。

これも現代では、目の前で職人さんが揚げてくれたりするお店があって高級料理のイメージがついていますが、江戸時代にはまさしくファーストフードだったのです。

屋台などで売られていた天ぷらは魚の身などにあらかじめ下味をつけ、衣をつけて揚げた安価なスナックであり、爪楊枝のようなものを刺してかじりつく様子が描かれた浮世絵も残っています。

当初は手軽だったこれらの料理が、洗練されながらやがて高級料理へと変わっていった背景には、多くの人々に長く愛されてきた味だったということが関係しているのでしょう。

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