<出典:wikipedia>
はじめに
中国からもたらされた禅宗。
思想・建築・芸術等々のあらゆる文化的な要素を含み、当時の武士階層を中心に熱烈に受け入れられると、独自の発展を遂げていきました。
なかでも、料理というジャンルでは日本に決定的なインパクトをもたらしました。
栄養価の高い豆類やその加工品などは、宗教的な戒律という枠組みを超えた新たな食事として日本に根付いていきました。
元々が中国から学んできた禅宗。
日本人が最初に出会ったものは当然、お経も文化も中国のものに準じていました。
そんな中華風の禅の伝統を引き継ぐ宗派が、「黄檗宗(おうばくしゅう)」です。
そして黄檗宗には、中華風の精進料理といえる「普茶料理(ふちゃりょうり)」が伝わっています。
ここではそんな普茶料理について解説します。
普茶とは
普茶料理の「普茶」とは、「普(あまね)く茶を振る舞う」という意味であり、身分や立場、上下の別なくみんな平等におもてなしをする、という願いが込められています。
お茶も元々は寺院で薬として用いられたものであり、これを一般に広く振る舞うことを「茶盛り」といいました。
現在でも巨大な茶道具でお茶を回し飲みする、西大寺の「大茶盛り」が有名です。
上下分け隔てなく、という信念はいまに伝えられ、黄檗宗総本山の京都・萬福寺では上座も下座もないという意味から卓に料理を並べ、皆で分け合って食べる形式を守っています。
独特の献立
普茶料理では、大皿に盛った料理を参会者で取り分けながら食べることになっています。
一人ずつのお膳で供される日本の懐石とは、すでにスタイルが違いますね。
そして料理の名前も中華風のものとなっています。
和え物は「冷拌(ロンパン)」、香の物は「醃菜(エンツァイ)」、野菜の炊き合わせは「笋羹(シュンカン)」、揚げ物は「油糍(ユジ)」、胡麻豆腐は「麻腐(マフ)」、野菜を葛(くず)でとじたものを「雲片(ウンペン)」、スープは「澄汁(スメ)」、ご飯は「飯子(ハンツウ)」、ご飯を入れる桶は「行堂(ヒンタン)」、デザートの果物は「果菜(クォツァイ)」や「水菓(スイゴ)」などと呼ばれます。
味付けはしっかり目
日本の精進料理が淡白で、素材そのものの味を楽しめるように作られているのに対して、普茶料理では比較的しっかりとした味付けがなされます。
もちろん精進料理としては、という意味ではありますが、例えば揚げ物の「油糍」などは下味のついた野菜のから揚げであり、現代人が食べても十分ボリューム感に満足するような料理になっています。
また、野菜の葛とじである「雲片」は、もともと切れ端や面取りで出た端野菜を余さずにいただくという工夫からできたものといいます。
感謝して、無駄なくいただくという「始末の心」も見習いたいものですね。