<出典:wikipedia>
はじめに
日本人はランキング好きだというマーケティング傾向は、国際的にもよく知られています。
インターネットサイトのレビューもおしなべてランキング形式になっており、何がどれだけ多くの人に注目されているか、という点に高い関心のあることが分かります。
しかし日本人のこのような志向は、どうやら今に始まったことではないようです。
というのも、江戸時代にはすでに現代にも通じるようなランキング形式のメディアが大人気だったからです。
当時から、飲食店や美人や観光地等々、あらゆるものが「番付」としてランク付けされ、大衆の耳目を集める恰好の広告となっていました。
ここではそんな「見立て番付」と呼ばれる江戸時代のランキングについてお伝えします。
「見立て番付」とは
「番付」とは、現代の大相撲にもあるように、力士の階級を東西に分けて列挙したもののことです。
当時の最高位は「大関」でしたので、第一位を大関として順に関脇、小結・・・と階級が並んでいました。
このような相撲の番付表になぞらえて、さまざまなものをランキングしたものが「見立て番付」です。
例えば当時の有名料理店を関東と関西の東西に分け、第一位を大関と見立ててそれらの名店としての評価を記したました。
まさに現代の「ミシュランガイド」にも通じるグルメ案内です。
見立て番付に店名が載るということは絶大な宣伝効果もあり、江戸時代の人々の流行への鋭敏なセンスを感じさせます。
見立て番付、江戸のランキング色々
見立て番付は大変な好評を博し、ありとあらゆるものがランキングされました。
当時は茶屋の女性従業員である「茶屋娘」がいわゆるアイドルのような存在として人気となり、そんな茶屋娘などの美人を見立て番付にしたものも好まれました。
また、温泉地や観光地などもランキングにはうってつけの対象として取り上げられ、はては歴史上の「仇討ち」までが見立て番付にされていました。
ちなみに、仇討ちのランキングではやはり「忠臣蔵」が堂々の大関に列せられていたようです。
面白いところでは、料理のメニューをランキングにした「為御菜(おさいのため)」という見立て番付がありました。
これは日常の惣菜を「精進料理の部」と「魚類物の部」とに分けて、その味のよいことや材料が安価であること、そして調理に手間のかからないこと等々を考慮してランキングした庶民派の番付です。
ちなみに精進の大関は「八はい豆腐」という豆腐料理、魚の部は「めざしの干物」がそれぞれ位置しており、「行司」の欄は「沢庵漬」とされているなど、遊び心あふれるものでもありました。