<出典:wikipedia>
はじめに
武士の本来的な任務は、戦うことにありました。
それゆえに「武術」が編み出され、その訓練を行い技を身に付けることが武士にとって必須の教養とされました。
また、戦場では、ありとあらゆる武器の扱い方に精通することが求められたため、馬の扱いや用兵など多岐にわたる知識と技術が必要でした。
それらは各ジャンルごとに専門的な流派が形成され、体系化されていきました。
江戸時代の初期。
中国での武器法の分類である「十八般兵器(じゅうはっぱんへいき)」という概念が導入され、やがて日本でも「武芸十八般」という武術のジャンルに対する区分が生まれました。
ここでは、そんな武芸十八般とはどのようなものだったのかをご紹介しましょう。
「十八般」とはたくさん、という意味
まず、十八種の武術があるというイメージを持ちますが、これは流派や時代、見解などによってその内容がやや異なることがあるため、実際には「多くの種類」を意味する数字と理解できます。
具体的には、「剣術(大刀)」「居合術」「小太刀術」「槍術」「薙刀(なぎなた)術」「棒術」「杖術」「柔術」「捕手(とりて)」「弓術」「砲術」「馬術」「水術」「十手術」「鎖鎌術」「手裏剣術」「含針術」「忍術」などが「十八般」の一例として挙げられます。
現代でも「術」から「道」と名前を変えて運動競技や武道として伝わっているものもありますが、見慣れないものも多くあることが分かります。
【捕手】
いわゆる「逮捕術」で、相手を傷付けずに取り押える技術のことです。
【水術】
「古式泳法」として今に伝わるものもあり、鎧を着用したままで泳ぐ技などを教えています。
【手裏剣、含針】
隠し武器に類するもので、刀などの主武装以外でも、危急の折に使う武器の扱いも必要とされました。
【忍術】
諜報活動などに必要な技術や知識を含んだ総合的な術であり、すべての武士が必ず学んだわけではないと考えられていますが、「十八般」に含めることでその重要性を示唆している点で興味深いものです。
あらゆる状況への対応が主眼
武芸十八般に挙げられた武術を見てみると、ある規則性のあることに気付きます。
それは、長短の武器術に性格の異なる体術、飛び道具を扱う技に隠し武器、そして馬術や水泳などの移動法といった、戦場での働きに必要なあらゆる体技が網羅されているということです。
有事において、武士は必ずしも意図した得物を使えるわけではありませんでした。
もしかすると戦場で武器を失い、代わりに拾った異なる武器で戦いを継続しなくてはならないこともあったでしょう。
また、平常時であっても敵襲の危険や、自己防衛の必要に迫られたことも考えられます。
そのような事態に柔軟に対応できるよう、さまざまな武器術や体技に習熟している必要があったのです。
「武芸十八般」とは、まさしくそのような武士の置かれた状況を克明に伝えるものなのです。