『しらす』に基づく統治
『しらす』とは”知る”を語源にした言葉。
古くから天皇は、国民の喜びや悲しみ、願いなどを自分に写し、神の心も自分に写し、無私の精神で国を治めていました。
そして、この天皇の”徳”に対して、国民が”忠誠”の心を持ち日本という国で生活するというわけです。
『しらす』の考えを知った井上は、これをもとに教育勅語の作成に取り掛かります。
作成にあたり井上が掲げた条件は7つ。
1、他の政治事と同じにならないこと
立憲政体を採用している国では、君主が臣民の良心の自由に干渉しないことが基本でした。 2、宗教的なことは言わない 信仰の自由を認められている日本で、「神を尊べ」とか「天を尊べ」と言ったら、天や神が存在しない宗教信者が反発し、争いが起こります。 3、哲学上の理論に干渉しない 「人間の良心は神が作ったもの」といった考え方には必ず反論が出てきます。 4、政治上の思惑を入れない 天皇は神聖にして侵すべからざる存在。 5、中国やヨーロッパの思想に踏み込まない 儒学を連想させる言葉や西洋の考え方に踏み込むことなく、東洋・西洋の枠を超えた不偏不党の教育指針を示すべきだと考えました。 6、消極的な言葉を使わない 君主の言葉にふさわしく。 7、宗派の争いを助長しない ある宗教が喜ぶ発言は、他の宗教が怒ること。 |
君主の言葉でありながら、国民に押し付けるものではなく。
日本の国体にのっとりながら、宗教や政治には関わらない。
日本の将来を一途に想った井上は、日本の精神を守るため、一字一言を大切にして教育勅語を完成させました。