戦国の主兵装「槍」。それを扱う「槍術」とは?

はじめに

「一番槍」「槍合わせ」「一本槍」「槍ぶすま」・・・等々、「槍」がつく言葉はたくさんあります。

槍は戦国時代において、一兵卒から馬上武者に至るまでが使用した、ポピュラーかつ代表的な白兵戦用の武器でした。

長くまっすぐな柄の先に短めの刃が取り付けられ、「突く」ことを主眼とした実にシンプルな兵装です。

しかし、槍には長さばかりでなくその刃の形状にも多くのバリエーションがあり、それらを扱うための「槍術(そうじゅつ)」という武術が発達してきました。

僧術では、突く以外にも、斬る、払う、叩く、薙ぐ等々の多彩な動きを行う強力な術として、武士の必須修得技術となりました。

ここでは、大まかな槍の種類と、それを扱う技術について概観してみましょう。

素槍(すやり)

もっとも基本的な槍の形が「素槍」です。

読んで字のごとく、長い柄に短めの刃がついているだけの明快な造りであることが多く、「槍」といえば通常はこれを指すと考えてよいでしょう。

ただし、その柄と刃の長さには実に多くの種類があり、定まったスタイルというのはなく、槍術流派によってそれぞれの規格を設けている場合があります。

おおむね六尺(約180cm)サイズのものを「手槍」といいますが、いわゆる「長槍」では3mを超えるものも珍しくなく、中には10m前後といった途轍もなく長い槍があったことも知られています。

このような長槍は戦場の最前列に居並ぶ足軽たちが使用したとされており、敵陣営より少しでも遠い間合いから打撃を与えるために要求された長さでした。

素槍の基本的な操作としては、握った手の内を滑らせて突き込むことにあり、これを「槍を扱く(しごく)」といいます。

素早く突き出して、また素早く手元に引き込むことで相手をこちらの懐に入らせないという戦法も重要になります。

多くの槍術流派では、この素槍の扱いを基本中の基本としているといいます。

鎌槍(かまやり)

鎌槍は、槍先の根元の部分から鎌状の刃が分岐したものをいい、多くの場合その刃は剣のような諸刃になっています。

つまり、突くだけではなく鎌のように「掻き切る」「引き倒す」という使い片が可能となり、応用の幅が広がります。

刃の片方に鎌があるものを「片鎌槍」、両方に鎌がついて十字に見えるものを「十文字鎌槍」と呼びます。

十文字鎌槍は奈良の「宝蔵院流」が有名で、鎌の部分で斬ったり相手の槍を引き落としたり、精妙な動きを行うことが知られています。

管槍(くだやり)

通常の槍にスライドする管状の持ち手を取り付けたのが「管槍」です。

普通に手の内を滑らせるよりも迅速に操作することができ、しかも螺旋状の回転を加えながら攻撃できるため、まるで弾丸を発射したかのように強力な突きを生み出します。

世界に類を見ない、日本独特の槍の形態であり、愛知の「尾張管流(おわりかんりゅう)」が有名な管槍の流派です。

尾張管流では古武道流派としては珍しく、剣道具に良く似た防具を着用して槍の試合稽古を行うため、現在でも管槍同士の勝負を観ることができます。

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