3時間かけて食べる中世精進料理、東大寺の「結解料理」

<出典:ルーラル電子図書館

はじめに

古来より、僧侶は戒律で肉食を禁じられてきたため、寺院では動物性の食材や臭いの強い野菜などを使わない精進料理を発達させてきました。

精進料理は僧侶たちが日々の厳しい修行に耐え得る体力を養うため、とても栄養バランスのよい食事でした。

そして、それは日本の食文化にも大きな影響を与え、なかには豪華とすら表現できるほどの独特の供応料理として発展したものもありました。

そんな精進料理のなかでも、特に古式にのっとったものに東大寺の「結解料理(けっけりょうり)」があります。

耳慣れない名前の料理ですが、これこそ中世の風情を現代に伝える、寺院ならではの大ごちそうだったのです。

ここでは、そんな結解料理についてご紹介します。

結解料理とは

結解料理の起源はよく分かっていませんが、一説には寺院が有していた荘園の年貢が無事に納められたことを祝って、荘園の管理を行っていた荘官たちにふるまったのが始まりといわれています。

年貢の収支決算についての書類を「結解状」といい、結解料理とはその語に由来するものと考えられています。

現代の結解料理は、古い記録をもとにして大正時代の初め頃に復元されたものですが、中世の寺院における食文化を考えるうえで、貴重な歴史遺産となっています。

結解料理の献立

さて、気になる結解料理のメニューを概観してみましょう。

基本的に結解料理は、膳と膳の間に折り目正しくお酒が供される、文字通りの「献立」となっています。

中世の遺風らしく、後の高足膳ではなくお盆のような「折敷(おしき)」に載せて各種の料理が出されます。

まず、「初献」では菜の和え物、弐石五斗と呼ばれる奈良漬、高野豆腐、揚げ豆腐の澄まし汁、小豆餅などが並びます。

興味深いのは、澄まし汁に胡椒がかかっていたり、小豆餅には別皿で白砂糖が添えられたりしている点です。

胡椒も白砂糖も中世の日本においては海外からの輸入によってもたらされる超貴重品で、往時の東大寺のネットワークと財力を感じさせるものです。

次の「弐献」では出汁かけ素麺やさつま芋の天ぷら、煎餅麩のお吸い物に針生姜を添えたもの、梅干しに芥子などが出されます。

また、ここでも紙に包んだ胡椒が添えられ、その風味を楽しむことができます。

最後の「参献」では海苔、きのこのお吸い物、蓮根の酢漬け、みかんの皮である陳皮、そしてめずらしいところでは、水仙の根のでん粉で作った春巻きの皮のようなものに胡桃入りの出汁をかけたものが並びます。

そして最後に抹茶とお菓子で締めくくられますが、なんと所要時間は約3時間という、作法に則った厳粛な雰囲気のもてなしとなるそうです。