言葉と模様の遊び心、江戸のデザイン「判じ物」

<出典:エス・ケイ通信

はじめに

爛熟した文化を謳歌していた江戸時代、豊かな生活は「衣」の面においてもさまざまな発達を後押ししてきました。

日本の伝統的な意匠とされているものには江戸期に登場したものも多く、実にセンスのいいデザインが生み出されてきました。

しかし江戸人のすごさはそれだけではありません。

デザインの中にも巧みに遊び心を織り交ぜて、洒落っ気のきいたファッションとして愛でてきた歴史をもっています。

今回は、そんな江戸のデザインの中でも「判じ物」についてご紹介したいと思います。

「判じ物」とは

「判じ物」とは、つまり「絵解き」のことであり、ある種の記号の組み合わせによってその意味を推測して楽しむという性格のものです。

なぞなぞ遊びのような面白さもあり、それが何らかのワードや地名、短文などの意味になっていることから手ぬぐいや衣服などの意匠に取り入れることが流行しました。

判じ物は絵本のようなものから商店の立体看板まで幅広く使われ、江戸時代の人々の遊び心の多彩さを物語っています。

それでは、以下に代表的なものをいくつか挙げてみましょう。

鎌+リング+ぬ?

草刈りなどに使う刃物の「鎌」、リング、すなわち輪っか、そして平仮名の“ぬ”。

一見何の脈絡もないようなイラストが並んだ意匠を目にしたことがあるのではないでしょうか。

配列の巧みさによって、見るだけでも十分なデザイン性を感じさせますがこれにはれっきとした意味があるのです。

「鎌」に「輪」に「ぬ」、これで「かまわぬ(構わぬ)」と読ませているのです。

これは歌舞伎役者の「市川団十郎」が舞台で発した「かまわぬ」というセリフが流行したことに端を発するものとされています。

これに呼応するかのように「鎌」+「井桁」+「枡」の模様で「かまいます」という意味のデザインも登場しました。

弓+矢?

商店の看板にも判じ物が使われたことは前述の通りですが、これにも駄洒落がきいた面白いものがあります。

矢をつがえて引き絞った形の弓を吊り下げているお店がありましたが、弓術の道具屋さんではありません。

「弓射る(ゆみいる・ゆいる)」、つまり「湯入る(ゆいる)」ということで、正解は「銭湯」です。

江戸の人たちはお風呂が大好きだったとされていますので、街のあちこちで見ることができたのでしょう。

剣+花+オール?

剣と花と舟のオール、つまり櫂(かい)を並べてできる言葉は「剣(けん)」「花(か)」「櫂(かい)」、すなわち「けんかかかい(喧嘩買い)」です。

威勢のよさをアピールする若者らしい背伸びの仕方で、江戸時代のちょっとやんちゃな青年たちの様子が目に浮かぶようです。

このあたりの心模様は、現代人とさして変わりがないのかもしれませんね。